2013年7月20日土曜日

今年はなんだか唐突に夏がきたような気がして落ち着かず、心の中の虚しい部分に日差しが照りつけるたびきしきしと痛んで、風邪がなかなか治らないどころかどんどん悪くなっていく。
喉を痛めて軋んだような声しか出ず、今朝などは熱でぼんやりとして、通勤電車に乗っているのに何故かもう既に会社の会議室にいるような錯覚がするので、どうしようもなく休みをいただいてしまった。

久々に平日昼間の自宅にいると、その、あまりに透き通った静けさにハッとする。たとえば窓の向こうで金魚の跳ねる音が聞こえる事は、数ヶ月前、会社に入る前の暮らしの中では当たり前のことで、納品前などに慌ててミシンで作業をする合間などに耳にしては「またけんかして、うるさい金魚だ」などと常々思っていたのだが、実はこのパシャというのは静けさの部類に含まれるのだなと、今になって気付く。会社にいるときに聞く、複数の人間が延々と黙って叩くパソコンのタイプ音や、昼前に鳴り止まなくなる電話のベルや、コピー機が嬉々として働く音など、生産性のある、社会が社会として在るために必要不可欠な音たちのことを、いっそ雑音と名付けてしまいたくなるほど、窓の向こうで金魚の跳ねるパシャという音は透明で、唐突な夏の日差しに照らされてゆらゆらと輝く。

わたしはしばらくの間その静けさにそわそわしていたが、熱さましの薬などを飲んで、静けさに埋もれているうちにとろとろと眠り、いろいろと夢を見終わるころには、起き上がって金魚の水槽を眺めにいこうと思えるくらいの健康な思考を取り戻していた。

ほんとうはずっと、金魚がああやってパシャと跳ねるのが、心底うらやましい。






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