部屋の隅で縮こまって、缶ビールをプシュとあけた瞬間、身体がしゅるしゅると縮小し、300分の1くらいのサイズになって、もうどうしようもなく、仕方がないから缶をよじ登り、一口ものんでいないビールのなかに、そっと飛び込んだ。
2013年6月27日木曜日
2013年6月26日水曜日
うさぎ
夜道にて、
「あなたは神を信じますか」とかそんなようなとりとめのないことを言って、わけのわからない分厚い本を差し出してきた女性がいた。
彼女は30歳くらいで化粧っ気はなく、小麦農家のおばあさんみたいなもったりとした服を着ていて、片手に大きなカゴを持ち、そのなかに生きた白いうさぎを忍ばせていた。
その姿はまるでB級映画のようで、ああ宗教など空想の物語でしかないのだなあとわたしは思い、
彼女の持つゲージをふんだくって、うさぎを青梅街道の中途半端な歩道に放し、勢いよく走り出したうさぎと並走して、自転車で帰路についた。
自宅について息を切らしているうさぎを抱きかかえようとすると、うさぎはするすると消えてしまって、わたしは、得体の知れないものを信じるのなんて向いていないよと、投げやりな気持ちになって、そして、今。
2013年6月25日火曜日
日本人の顔
しかしどんなに顔を近付けて食べてもどこか味気なく、恐らくそれは和風の度合いが足りないからであろうと、ためしに自分が着物を着て日本髪を結っているかのように想像して食べてみたら、サラダが漬物かなにかのように思えた。
2013年6月23日日曜日
頭と身体がいくつあっても足りない。
夢で見たと思っていたことが
よくよく考えてみたら
実は映画の中で起きていたことで、
小説で読んだなと思っていたことは
はるかむかし
実際に経験したことの残り香で、
前にこういう事があったなと思い返したことは
過去にした妄想の内容で、
映画で見たと思っていたことは
だれかからこっそり聞いた話で、
たしかな記憶などそういくつも無く、
好きな人の顔ほどうまく思い出せず、
自分の顔すらうすぼんやりとして
いまいちよく分からず、
わたしは
普通のはたらく大人の女として暮らしたいが、
本当は
小説家にも詩人にもお針子さんにも喫茶店か小料理屋の店主にも雑貨屋さんにもミュージシャンにだってなりたくて
つまりは何者にもなりたくない。
よくよく考えてみたら
実は映画の中で起きていたことで、
小説で読んだなと思っていたことは
はるかむかし
実際に経験したことの残り香で、
前にこういう事があったなと思い返したことは
過去にした妄想の内容で、
映画で見たと思っていたことは
だれかからこっそり聞いた話で、
たしかな記憶などそういくつも無く、
好きな人の顔ほどうまく思い出せず、
自分の顔すらうすぼんやりとして
いまいちよく分からず、
わたしは
普通のはたらく大人の女として暮らしたいが、
本当は
小説家にも詩人にもお針子さんにも喫茶店か小料理屋の店主にも雑貨屋さんにもミュージシャンにだってなりたくて
つまりは何者にもなりたくない。
2013年6月12日水曜日
雨ィ
雨が降るとお台場は腐ったように白くなります。
ストッキングが雨に濡れると雨の雨たる冷たさをひしひしと感じてハッとします。
雨のなか傘もささずに自転車で走ると思考がすべてべらんめえ口調で展開されます。
雨にぬれた紫陽花は美しくたとえば自分の顔を取り外して雨にぬれた紫陽花を二三まとめたものと取り替えたくなります。
きょうは梅雨らしくレイニーでした。
2013年6月4日火曜日
2013年6月3日月曜日
カラーバー
体調がわるいときはきまってたちの悪い夢をみるからいけない。
昨晩、あれは深夜何時頃だったか、やっぱりそういう夢をみて目が覚めた。
気を紛らわせようと思ってテレビを付けたらカラーバーだった。
仕方がないからカーテンを開けてみたらば外もカラーバーだった。
ハッとした、悪い夢のことをわすれた。
はじまりのようなおわりのような感じがする。
2013年6月1日土曜日
六月
6月になった途端体調がおかしくなった。背中と腰がきりきりとし、この部屋ではしないはずの煙草の香りを何故か微かに感じ取り、もうちょっとしたらギターの弦がひとりでにぽろろろろと鳴るような感じがしている。近所でパトカーのサイレンが鳴っているような気さえするが、こればっかりはどうやら本当に鳴っているみたいだ。
何かあったのかな。
ハルジオン
ハルジオンという花は見た目こそか細くてひ弱そうだが非常にちゃっかりしていて、咲けそうな場所があったら咲きにいくような花だ。
たとえば誰かが家を取り壊して土地を更地にして、3ヶ月そのままにしておいたらその空き地はあっというまにハルジオンだらけになる。いや1ヶ月でなるかも。道路脇のコンクリートとコンクリートの間にはさまった微妙な土部分とかにも余裕で生えるし、どこにでもいきなり生える。
そうしてどこに生えるときだって、急に帰省した地主の娘みたいにしれっとして、細い体をふらふらと風に揺らしながら、元々そこは自分の貸していた土地だよと言わんばかりに根付く。ほんとうにいつも気付いたらいるし、結構背の高い花なので、なかなかびっくりする。とても強くて、おもしろい花だ。
わたしの家の裏も、最近まではそうでもなかったのに、いつの間にかハルジオンだらけになっていた。
わたしはびっくりしてそのことをすぐ母に話したのだけれど、
「ハルジオンてなに?」
とすっとぼけたことを言われてしまった。
あれだけどこにでも咲くような花を母が知らないはずもなく、ムキになって説明したら母はすぐに頷いてくれたが、そのあと得意げに、
「ああ、ビンボウグサね」
となんか悪口みたいなことを言い出した。
貧乏草だなんてそんな気の毒な呼び方は完全にないわと思ってずっと笑っていたら、こんどは母がムキになって「いやその花はほんとうにビンボウグサだ」と言い張る。だんだんちょっとした口論みたいになってきてしまったので、ネットで調べてみると、
【ハルジオンはキク科ムカシヨモギ属の植物。ビンボウグサ、ベンジョグサと呼ばれることもある。】
とのことだった。
母ははじめこそ「ほらね」とでも言うつもりでいたのであろうが、『便所草』という更にひどい別名があることを知るとこれ以上何も言えなさそうな顔をしていた。わたしもとてもしんみり気持ちになった。
たしかわたしが中3くらいのとき、バンプオブチキンが好きで『ハルジオン』という曲をよく聞いていたが、あの歌はとてもいい歌なので、これを読んでくれているハルジオンの方がもしいたら、ぜひ聞いてみてください。
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