2013年3月19日火曜日

スワン


すっきりしないので買い出しついでに井の頭公園を散歩した。

桜は一分咲き。
飲み物を買って柵の上に座って、
スワンのボートに乗り込んだ親子を眺めていた。

若い父親は懸命にボートを漕ぐ。スワンのおしりからは絶え間なく力強いあぶくが出ていた。少年はぼんやりと父親のとなりに座り、そこいらじゅうを指差している。

ふと、少年が濁った池の水に手を伸ばし、父親が止めるのを待たずしてその手を口に含んだ。
アッ、というふたりの声とともに、スワンのおしりから出ていたあぶくが尻すぼみに出なくなった。
スワンは止まり、彼らは向き合ってなにかを話し、少年は父親に抱きついた。
少年にとって、花びらまじりに濁った池の水と、父親の体にまとわりついた汗と、どちらのほうが冷たかっただろう。

やがてスワンは再びあぶくを立てはじめ、彼らは広い池のむこうのほうに消えて行った。











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