日記。
五月六日月曜日。
つい去年まで通っていた大学に自転車で行くのに迷子になってしまった。
ただしこれは学校のことを忘れてしまったわけではなくて、通学に使ったことのなかった良さげな道を適当に走っていたからわかんなくなっちゃっただけの話だ。
しかも迷子になることは嫌いではないので別に哀しくも悔しくもなかったし、そもそもわたしは一寸も迷わず学校についたところで、いや家に居たって迷子みたいなものだから別にいいんだ。
でもそうは思っていてもあんまり迷いすぎると疲れる。暑くてすこし休もうと思ったらちょうど目の前に「ガラクタ公園」という雑な名前の公園が現れた。
そこはガラクタとかいうわりに植え込みに沢山花が咲いているようなきれいな公園であった。ただしブランコとか滑り台とかジャングルジムといったきちんとした遊具はどこにもなく、丸や三角にくり抜かれた壁が水平も平行も無しに立っているだけで、あんまりよく意味がわからなかった。
しかもほんとうに微妙なところにしか日陰がなかったので、こんなところで休めるもんかと思ってそのまますぐに立ち去った。
半ばむしゃくしゃしながら一層適当に自転車をこいでいると、余計にわけのわからない入り組んだ住宅街に来てしまった。住んでいても迷いそうだなあと思いながら進んでいると、小道の両側にマネキンやらハンガーにかけた婦人服をならべた怪しげな商店のあるところに差し掛かった。気味悪く通りづらいと思ってブレーキをかけた時、店の奥からワンピースを着たオバさんとおばあさんの間くらいの人が出てきた。後ずさりたい気持ちになったが、自転車でバックすることはなかなか難しいのでこっそりと通り抜けた。ちょっと現実離れにも程がある感じだった。気になるけどもう一度探そうとしたところで二度と辿りつけなさそうだ。
入り組んだ住宅街を抜けると案外あっさり線路沿いのよく知っている道に出たので、一瞬夢でも見ていたのかなというような気持ちになった。無事に大学について用を済ませたあと、卒業生のくせに図書館に行ってずっと漫画を読んでいた。途中で夕立がきてゲロゲロと雷が鳴って雨が降ってサッとやんだ。夕立というのは気楽なものだなあと思う。止んだあとすぐの夕焼けがあんまりケロッとしていたのでそう思った。大学生のときも図書館で本を読んでいるときに同じ窓から夕焼けを見たが、このケロッとした感じは夕立のあとでなければ拝めないような感じがしている。
この日はたぶん生まれて初めて1日に8冊も漫画を読んだ。多いのか少ないのかはよく分からないけど、これは恥じるべき事だとは思う。もっと昔から漫画をたくさん読めば良かった。
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